工学は自然科学を基礎として有用な事物を構築することを目的とした学問です．工学は社会の様々な問題を自然科学を用いて解決することにより，社会を根幹から支えています．このような工学の中にあって，今日の複雑化した社会の様々な対象をシステムと捉えて数理モデル化し，対象が抱える問題を応用数理科学を用いて解決しようとする新しい工学分野が数理システム工学です．その中でも，シミュレーション工学，金融工学，暗号・符号理論，数理モデリング，リスク解析，保険数理は，最も注目されている研究分野です．数理システム課程ではこれらすべての分野を学ぶことができます．

皆さんはもう数学質問受付室を活用しましたか？これは教員の研究室を自由に訪問できるオフィスアワーをさらに一歩前進させた本学独自の画期的教育システムです．学習のサポート効果は絶大で，文部科学省から高い評価を受けています．これは同時に教員達にとっても，どこでどのように学習上のつまづきが起きやすいのかを知る手掛かりになります．そこで数理システムの教員は全員で数学質問受付室を担当し，みなさんの苦手な点を的確に理解するように努めています．

全ての工学の理論的基盤は数理科学によって与えられます．社会がますます複雑になり，使われる科学技術がより高度になるにつれ，工学は数理科学に大きく依存するようになっています．その結果，数理科学を用いて問題を解決する数理システム工学は，数理科学を介して多くの工学的対象とリンクし，近年ますます幅広い分野と関係するようになっています．数理システム工学の特色は，その守備範囲の幅広さです．工業製品の設計はもちろん情報セキュリティーや新薬開発，さらには金融保険商品の設計や医学の分野にまで及んでいます．

暗号理論の専門家は情報産業において必要不可欠な存在ですし，数理ファイナンスを理解した金融工学技術者は金融・損保業界に無くてはならない存在です．また製造業においてはいろいろな数値シミュレーション技法に習熟したシステム技術者が求められており，損保業界では保険商品の開発に数理統計の専門家が中心的な役割を果たしています．このように数理システム課程卒業生は，製造業は勿論，製造業以外の幅広い産業からも強く求められています．そのため，例えば製造業が採用人数を極端に絞っても，金融・損保や製薬等の製造業以外の幅広い業種でも就職活動ができます．実際数理システムの就職先は製造業だけでなく幅広い業種にわたっています．特定の業種の景気に左右されないのが，数理システムの就職活動の強みです．