物体の運動のみを対象とする力学とは異なり、化学反応系から動物の神経系や生態系にいたるまで、ありとあらゆる非線形系の振る舞いを扱うきわめて学際性の強い分野です。また、単純な推論や予測が不可能で思いもよらないような振る舞いを示すような系が複雑系です。多くの自然現象や社会現象が複雑系であると言えます。発展著しいこの新しい分野に挑戦する意欲的な学生諸君の参加を期待します。
詳しい研究内容はこちら(研究室配属ガイド)。(pdfファイル)
メンバー
第43回 大阪府立大学 非線形物理学セミナー
日時:2018年 9月 6日(木) 14:30 - 16:00
場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパス B9棟 111号室
講師:Helmut R. Brand氏(Department of Physics, University of Bayreuth)
題目:Macroscopic properties of ferromagnetic nematics
要旨:
Already more than 4 decades ago the possibility of ferromagnetic nematic liquid crystals has been postulated [1] by combining ferromagnetic nanoparticles with a nematic solvent. First experiments along these ideas were carried out immediately [2], giving rise to ferronematics with no spontaneous magnetization.
Only a few years ago [3], with the development of suitably well-characterized magnetic nanoparticles, truly ferromagnetic nematics could be synthesized and analyzed thus establishing the first multiferroic liquid system. The static properties including magneto-optic and converse magnetoelectric effects were demonstrated [4]. Quite recently the study of the dynamics of truly ferromagnetic nematic liquid crystals properties has started [5].
It was demonstrated in [5] that a dissipative cross-coupling between the two order parameters [6], magnetization and director, is essential to account for the dynamic experimental results quantitatively.
Recent developments [7,8] in the dynamic domain include investigations of the light scattering behavior as well as the coupling to flow including shear flows and the analog of the Miesowicz viscosities familiar from usual nematic liquid crystals.
[1] F. Brochard and P.G. de Gennes, J. Phys. 31, 691 (1970).
[2] J. Rault, P.E. Cladis, and J.-P. Burger, Phys. Lett. A
32, 199 (1970).
[3] A. Mertelj, D. Lisjak, M. Drofenik, and M. Copic,
Nature 504, 237 (2013).
[4] A. Mertelj, N. Osterman, D. Lisjak, and M. Copic,
Soft Matter 10, 9065 (2014).
[5] T. Potisk et al., Phys. Rev. Lett. 119, 097802 (2017).
[6] E. Jarkova, H. Pleiner, H.-W. Mueller and H.R. Brand,
J. Chem. Phys. 118, 2422 (2003).
[7] T. Potisk et al., Phys. Rev. E 97, 012701 (2018).
[8] T. Potisk, H. Pleiner, D. Svensek and H.R. Brand, Phys.
Rev. E 97, 042705 (2018).
第42回 大阪府立大学 非線形物理学セミナー
日時:2018年 8月31日(金) 16:00 - 17:20
場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパス B9棟 111号室
講師:大内 克哉 氏(神戸芸術工科大学)
題目:モアレを用いた測定手法とデザイン分野への応用の可能性
概要:
モアレとは、複数の規則正しい繰り返しパターンを重ね合わせた際に、それらの周期のずれにより視覚的に現れる縞模様のことである。モアレはその原理により2つの周期パターンの位相差を容易に読み取ることが可能であることから、その性質を応用して物体の3次元形状を測定する様々な手法が考え出され
てきた。ここではそのような手法の一つに着目し、プログラムを組み合わせることで容易にモアレの構築が実現できることを示す。更に、デザイン分野への応用の可能性として例えばモアレのコントロールや、また近年注目されつつある Augmented Reality (AR, 拡張現実) の技術との連携といった試みを紹介する予定である。
第41回 大阪府立大学 非線形物理学セミナー
日時:2018年 8月 16日(木) 14:40 - 16:00
場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパス B9棟 111号室
講師:長屋 智之 氏*(大分大学理工学部),折原 宏 氏(北海道大学大学院工学研究科)
題目:電気対流によって誘起される液晶の負の粘性
要旨:
液晶電気対流は非平衡散逸系の優れた実験系として数多くの研究がなされてきた。しかし,電気対流が出現する状態での液晶の粘性に関しては,殆ど研究がされてこなかった。
我々は,液晶電気対流の標準試料であるMBBA液晶の低周波交流電場下の粘性を計測したところ,粘性率は電圧増加と共に増加し,最大値を経て高電圧領域で著しく減少した。興味深いことに,せん断速度が極めて遅い場合は,高電圧下で粘性値は負になった。回転粘度計の円形センサーに力を掛けないようにすると,負の粘性状態では巨視的な自発流れが誘起されてセンサーが自発的に回転した。また,センサーに回転を阻む衝撃を加えると回転方向が逆転した。この現象を解析するために,せん断応力を制御してせん断速度を測定したところ強誘電体の自発分極と電場の関係とよく似たヒステリシス曲線が出現した。一方,せん断速度を制御してせん断応力を測定するとS字曲線が得られた。印加電場の周波数を増加させると,S字特性はある周波数以上で単調な曲線に変化した。この周波数の前後において微分粘性の周波数変化にCurie-Weiss則が存在した。これらの強誘電体相転移等とアナロジーより,負の粘性状態のMBBAを”ferroviscous fluid”と命名した。講演では,これらの実験結果と負の粘性を説明する定性的モデルについて紹介する。
(共催) ニュー・フロンティア材料研究会
第40回 大阪府立大学 非線形物理学セミナー
日時:2018年 5月 17日(木) 14:00 - 15:30
場所:大阪府立大学 中百舌鳥キャンパス B9棟 110号室
講師:北畑 裕之 氏(千葉大学)
題目:自己駆動系とパターン形成の流体力学的カップリング
要旨:
生物の運動を物理的に理解しようとする研究が近年盛んにおこなわれており、運動するという生物の特徴を抽出した系はアクティブマターと呼ばれる。アクティブマターは生物を模倣した系であるが、非生物系を用いても作ることができる。一方で反応拡散系を用いた自発的パターン形成は非線形非平衡物理学で議論し続けられてきた重要な話題である。本セミナーでは、自己駆動系とパターン形成が流体力学的に影響し合う2つの系について紹介したい。
まず、化学振動反応として有名なBelousov-Zhabotinsky反応(BZ反応)の溶液を液滴として油中に置いたときの反応拡散パターンと結合した液滴の運動について議論する。この運動には界面張力勾配に伴うマランゴニ効果が重要な役割を果たしている[1,2]。
次に、アクティブに形状を変える素子が空間的にばらまかれたときに、素子の変形が周囲の流動場を生み出し、その相互作用により粒子が運搬されてパターンを作り出されることが理論的に示唆される。そのようなパターンのダイナミクスについて議論する[3,4]。
参考文献
1) H. Kitahata, N. Yoshinaga, K. H. Nagai, and Y. Sumino, Phys. Rev. E 84, 015101 (2011).
2) H. Kitahata, N. Yoshinaga, K. H. Nagai, and Y. Sumino, Chem. Lett. 41, 1052-1054 (2012).
3) Y. Koyano, H. Kitahata, and A.S. Mikhailov, Phys. Rev. E 94, 022416 (2016).
4) A.S. Mikhailov, Y. Koyano, and H. Kitahata, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 101013 (2017).